図鑑MOVE「は虫類・両生類」を楽しむ!<ナイルワニ>

フィールド調査から知る世界
アフリカ.加藤英明HideakiKato.jpg

ワニが棲む池!
アフリカの川で調査するときに、一番気をつけなくてはならない動物が、ワニです。ワニは水辺にひそみ、水を飲みに来た動物に咬みつきます。そして、水中に引きずり込むと体を回転して、肉を引き裂いて食べてしまいます。そのため、川に入る時には、ワニの姿がないか、しっかり調べなくてはなりません。ワニの存在に気が付かないと、“ガブッ”と食べられてしまうでしょう。ワニは、世界各地で攻撃的で残酷な動物として恐れられています。

ナイルワニCrocodylus niloticus.加藤英明HideakiKato.jpgしかし、私が西アフリカで出会ったナイルワニは、少し異なりました。人間と仲良く暮らしていたのです。その場所は、ガーナとブルキナファソの国境近くにある池です。池にはワニがたくさん棲んでいるのですが、村人たちは、同じ池で水浴びをしたり洗濯をしたりしているのです。そんな村人の近くでは、3mを超える大きなナイルワニたちが、のんびりひなたぼっこをしています。

私は「怖くないのか」と村人に聞くと、「仲がよいから大丈夫」と教えてくれました。村の人たちは、昔からワニを殺さないで、一緒に水場を使っていたそうです。すると、ワニたちは人を襲わなくなったそうです。ワニは頭のよい動物です。

ナイルワニCrocodylus niloticus2.加藤英明HideakiKato.jpgこの池では、今でもワニと人が、ある程度距離を保ちながら棲み分けています。ワニもひかえめで、人もひかえめ。活動する場所を譲り合っているようです。それでも、時々ワニが人の近くに来てしまうことがあります。そんな時は、村の人たちにしっぽをつかまれて、ズルズルと移動されます。

野生のワニは危険なのですが、仲良く暮らすこともできるのです。

ナイルワニ
動きが素早い大型のワニです。子ワニに優しくて、卵から産まれるときに助けたり、水場で守ったりします。現在、生息地の破壊や乱獲によって、個体数が激減しています。
(図鑑MOVE「は虫類・両生類」:22、23ページ)
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図鑑MOVE「は虫類・両生類」を楽しむ!<コモドオオトカゲ>

フィールド調査から知る世界
秘境コモド島.加藤英明HideakiKato.jpg

コモドドラゴンが棲む島!
丸太のように大きくて太い体、鋭い爪、コモドオオトカゲは全長3mになる世界最大のトカゲです。“野生のコモドオオトカゲに会いたい!“。私はコモドオオトカゲを探すために、インドネシアに向かいました。コモドオオトカゲは、インドネシアの東に位置するコモド島とその周辺の島々に棲んでいます。いったいどのような生活をしているのでしょうか。

コモド島探検.加藤英明HideakiKato.jpg船は荒波を受けながら進み、ようやくコモド島に到着しました。コモド島は、1億2千万年前の火山活動によってできた島です。起伏が激しい島で、今にも恐竜が現れそうな雰囲気です。島に上陸すると、海辺の砂浜には、大きな足跡がありました。コモドオオトカゲです。コモドオオトカゲは海を泳ぐこともできます。足跡は新しいので、まだ近くの茂みの中に潜んでいるかもしれません。気を付けながら草むらの中を進んでいくと、樹の下で休むコモドオオトカゲを発見しました。

コモドオオトカゲVaranus komodoensisi.加藤英明HideakiKato.jpgコモドオオトカゲは朝、日光浴をして体を温めます。体が温かくなると活発に動いて、餌を探します。舌を出したりひっこめたりするのは、舌の先でにおいを鼻に運ぶためです。動物の臭いを見つけると、やぶの中にじっと隠れてえものを待ち伏せ、目の前に現れたイノシシやシカなどに咬みつきます。時には、体重1000kgもあるスイギュウも倒してしまいます。もちろん、人間も食べてしまいます。

そんな危険なコモドオオトカゲにも、弱点があります。それは、やわらかい鼻先です。私は近づいてくるコモドオオトカゲを細い木の棒で突いてみました。すると、コモドオオトカゲは、ゆっくり向きを変えて、森の中に姿を消したのでした。

コモドオオトカゲ(コモドドラゴン)
普段はおとなしくて動きはゆっくりですが、腐肉や血のにおいをかぐと、急に凶暴になります。5月頃になると繁殖のため、オス同士が戦うことがあります。
(図鑑MOVE「は虫類・両生類」:72、73ページ)
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図鑑MOVE「は虫類・両生類」を楽しむ!<ワニトカゲ>

フィールド調査から知る世界
ワニトカゲShinisaurus crocodilurus.加藤英明Hideaki Kato.jpg

ワニトカゲを追う!
ワニのようにごつごつした体、縦に平たい尾。チュウゴクワニトカゲは、まるで小さなワニのような姿をしています。そんなワニトカゲの生態を調査するために、中国とベトナムの国境地帯に向かいました。

ワニトカゲは山の奥深くにすんでいます。生息数がとても少ないので、野生の姿はめったに見ることができません。私は、川をどんどんさかのぼり、岩を飛び越え、崖を登り、ようやくシナワニトカゲが棲む地域にたどり着くことができました。ワニトカゲは、木々に覆われた渓流に棲みます。「ワニトカゲはどこにいるのだろうか?」。渓流での探索を続けると、ようやくワニトカゲを見つけることができました。渓流に横たわる木の上でじっとしていたのです。

ワニトカゲShinisaurus crocodilurus2.加藤英明Hideaki Kato.jpgワニトカゲは、主に昆虫を食べます。そのため、渓流に落ちて流れてくる虫を、木の上で待っているのです。「もう少し近くで観察したい」と思って、10mほどの距離まで近づきました。すると、私の姿に気づいたワニトカゲは、渓流に飛び込み、水の中に姿を消したのでした。

チュウゴクワニトカゲ
昼行性で、夜は岩の隙間などで寝ています。涼しい環境を好み、寒い時期は冬眠します。卵ではなく、子どもを産みます。
(図鑑MOVE「は虫類・両生類」:76ページ)
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図鑑MOVE「は虫類・両生類」を楽しむ!<ゾウガメ>

フィールド調査から知る世界
ガラパゴスゾウガメGeochelone nigra. 加藤英明Hideaki Kato.jpg

ゾウガメの散歩!
ガラパゴスゾウガメGeochelone nigra2. 加藤英明Hideaki Kato.jpg森の中で、大きなリクガメに出会いました。ガラパゴスゾウガメです。甲羅の大きさ1m以上、体重は200sを越えます。あしはがっしりしていて、ガサッ、ガサッとあし音を立てながら歩いています。耳を澄ますと、あちらこちらであし音が聞こえました。よく見ると、他にもゾウガメがいて、みんな同じ方向に歩いて行きます。いったいどこに向かっているのでしょうか。私は、ゾウガメたちの後をついて行きました。すると、広い草原にたどり着きました。そこには、餌になる新鮮な草と、飲み水になる大きな水たまりがありました。

ガラパゴスゾウガメGeochelone nigra3. 加藤英明Hideaki Kato.jpgゾウガメたちは、雨が降らなくて水がなくなる時期になると、丘陵地に移動します。餌と水があるからです。私は、水たまりに入っているゾウガメを見つけると、静かに近づきました。しかし、ゾウガメたちはすぐに私に気づき、シューッと大きな鼻息を出しながら、頭やあしを甲羅の中に隠してしまいました。その姿は、まるで海に浮かぶ島のようでした。

ガラパゴスゾウガメ
世界最大級のリクガメです。草食で、植物の葉や花、果実を食べます。島の環境によって、甲羅の形は様々です。
(図鑑MOVE「は虫類・両生類」:32ページ)
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図鑑MOVE「は虫類・両生類」を楽しむ!<はじめに>

<監修者の言葉>
加藤英明HideakiKato図鑑MOVE.jpgフィールド探検に出かけよう!
図鑑を読んで、は虫類や両生類に興味を持ったら、あなたも野外へ探検に行ってみましょう。なかなか会うのが難しい種もいますが、会えたときは感動です。

砂漠探検.加藤英明Hideaki Kato.jpg
トルクメニスタンの砂漠で調査

幻のトカゲを探す旅
カエルのような顔。口もとの大きなひだ。灼熱の砂漠で、不思議なトカゲに出会いました。私は、日本人で初めて野生の姿の撮影に成功し、まだ名前もないこのトカゲに、オオクチガマトカゲと名前をつけました。

サバクオオトカゲVaranus griseus. 加藤英明.jpg海外に出て調査を始めたころ、旧ソ連時代(今のロシア)の古い教科書の中に、不思議なトカゲの絵を見つけました。トカゲの口が、顔からはみ出るぐらい大きいのです。「この不思議なトカゲを見てみたい!」私は、そのトカゲを探すために、まずはキルギスという国の砂漠に行きました。砂漠には足跡が残るので、トカゲが潜む穴を見つけることができます。土を掘り返して、全長1mのトカゲを捕まえることができました。しかし、残念ながら、不思議なトカゲではありませんでした。その正体は、キルギスでは絶滅したといわれていた、希少なサバクオオトカゲでした。

ロシアリクガメAgrionemys horsfieldii.加藤英明Hideaki kato.jpgそのあと、ウズベキスタンという国に行きました。この国では、なかなか不思議なトカゲの情報を得られませんでした。やっと捕まえられたのは、ロシアリクガメ。砂漠にすむカメで、暑さを避けるために深い穴を掘って、すんでいました。

さらに、トルクメニスタンという国に行きました。すると、そこにすんでいる人が、ヘリパタシという不思議なトカゲがいることを教えてくれました。ヘリパタシとは、“大きな耳”という意味だそうです。私は、足が砂に潜ってしまうほど歩きにくい砂漠で、何日もトカゲの姿を探しました。そして、大きな砂丘の上で、ついに不思議なトカゲ、ヘリパタシと出会うことに成功したのです。大きく広がった口は、まさに“大きな耳”でした。このトカゲはガマトカゲの仲間でしたが、そのころ、まだ日本の図鑑には載っていませんでした。そこで私は、「大きな口を持つガマトカゲ」として、オオクチガマトカゲと名前をつけ、日本で紹介しました。

オオクチガマトカゲPhrynocephalus mystaceus.加藤英明Hideaki Kato.jpgこの地球上に存在する爬虫類と両生類は、数知れません。未知のものも数多くいるでしょう。これらの生き物は、砂漠やジャングル、川や海にもすんでいます。空を飛んだり、海を泳いだりするものや、大きなものから小さなものまで様々です。そんな爬虫類と両生類の不思議な魅力にひきつけられました。一体、どのような一生を送っているのでしょう。私は、子どものころ、世界中に生息する爬虫類、両生類を追いかける夢をもちました。今では世界のジャングルや荒野を駆け廻っています。みなさんも、世界中の爬虫類、両生類の世界をのぞきに、フィールド探検に出かけてみましょう。 
                         加藤英明
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