フィールド調査から知る世界
ワニが棲む池!
アフリカの川で調査するときに、一番気をつけなくてはならない動物が、ワニです。ワニは水辺にひそみ、水を飲みに来た動物に咬みつきます。そして、水中に引きずり込むと体を回転して、肉を引き裂いて食べてしまいます。そのため、川に入る時には、ワニの姿がないか、しっかり調べなくてはなりません。ワニの存在に気が付かないと、“ガブッ”と食べられてしまうでしょう。ワニは、世界各地で攻撃的で残酷な動物として恐れられています。
しかし、私が西アフリカで出会ったナイルワニは、少し異なりました。人間と仲良く暮らしていたのです。その場所は、ガーナとブルキナファソの国境近くにある池です。池にはワニがたくさん棲んでいるのですが、村人たちは、同じ池で水浴びをしたり洗濯をしたりしているのです。そんな村人の近くでは、3mを超える大きなナイルワニたちが、のんびりひなたぼっこをしています。
私は「怖くないのか」と村人に聞くと、「仲がよいから大丈夫」と教えてくれました。村の人たちは、昔からワニを殺さないで、一緒に水場を使っていたそうです。すると、ワニたちは人を襲わなくなったそうです。ワニは頭のよい動物です。
この池では、今でもワニと人が、ある程度距離を保ちながら棲み分けています。ワニもひかえめで、人もひかえめ。活動する場所を譲り合っているようです。それでも、時々ワニが人の近くに来てしまうことがあります。そんな時は、村の人たちにしっぽをつかまれて、ズルズルと移動されます。
野生のワニは危険なのですが、仲良く暮らすこともできるのです。
ナイルワニ
動きが素早い大型のワニです。子ワニに優しくて、卵から産まれるときに助けたり、水場で守ったりします。現在、生息地の破壊や乱獲によって、個体数が激減しています。
(図鑑MOVE「は虫類・両生類」:22、23ページ)