
キノボリウオは、東南アジアや南アジアに分布する淡水魚です。
大きな川にも生息していますが、沼や池、水田周りを好みます。耐塩性があり、沿岸部の湿地帯や汽水域、時には海に出ることも。東南アジアを中心に、分布の拡大に成功した魚の一つです。
全長は20pほど。目は真ん丸で大きくて、口はへの字、大きな口です。この大きな口で、小魚やカエルなどをパクパクよく食べます。

キノボリウオは、敵に襲われると、背びれを立てて食べられないように身を守ります。もし食べられてしまった時には…喉に鰭が刺さり、大変なことに。飲み込んだ敵が死んでしまう事もあります。大きく成長したキノボリウオには敵がいないように思われますが、カメやワニ、猛禽類などに襲われる弱い立場です。
子供の頃のキノボリウオは、背びれの棘が発達していないので…大型の魚や水鳥に数多く捕食されます。そのため、親魚は年間3.5万もの卵を産んで数で勝負。卵や子供を守ることはありませんが、卵は一日でふ化し、翌日には子供たちは泳ぎだします。


ただ、積極的に上陸して移動するわけではなく、雨が降ったあとなど、川の増水や氾濫で浸水するようなときに、新天地を求めて浅瀬を移動します。
<キノボリウオは木に登る?>
キノボリウオの名前は、“木登りする魚”という意味です。英語では、クライミンググラミー。学名では、アナバス Anabas。アナバスは、ギリシャ語に由来しています。 'walk up' '、”上がる”とか、”行く”という意味で、木登りの”climb up”ではありません。いつから木に登る魚と呼ばれるようになったのか…。
噂では、18 世紀末に、地面から1.5mの高さの木の上で発見されたことに由来するようです。ただ、木に登っている姿について、200年間、今まで記録はありません。木に登った姿を撮影できたら世界初!ですね。


キノボリウオは垂直な木は登れないけれど、木の板は登れます。倒木に身を乗り出すぐらいはできるでしょう。木ではなく水中から陸上に「上る」ことができ、短い距離を「歩く」ことができる魚です。
※キノボリウオは、繁殖力の強い魚です。日本には生息していませんが、沖縄など暖かい地域や温排水が流れる環境では、野外で繁殖してしまいます。
日本に数多く輸入されていますが…
野外には放さないようにしましょう!
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キノボリウオは木を登る?アナバスClimbing perch, Anabas testudineus ≫ 加藤英明【公式】かとチャン


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衝撃映像!キノボリウオ

<アナバス目>
キノボリウオの仲間は、今から6000万年ほど前に出現し、様々な種に進化しました。闘魚や観賞魚で知られるベタ、長くて細いひげのような腹鰭が可愛らしいグラミー、さらには水場のハンターのスネークヘッド。ライギョとしてもよく知られます。そして、ナンダスやバジス、ダリオ。環境によって体色が変わる不思議な魚たちもキノボリウオの仲間で、アナバス目に属します。形も大きさも大きく異なりますが、よーく観察すると、共通点も見えてきます。
これらの魚は、乾季と雨季で環境が大きく変わる東南アジアの水辺を生き残るため、鰓の上部に迷路のように入り組んだひだが収まる呼吸器官をもちます。パクっと口に含んだ空気がそのひだに触れることで、空気中の酸素を取り込みます。特殊な呼吸器官を獲得した魚、アナバス。キノボリウオを通して、不思議な魚たちの進化を垣間見ることができます。

アナバス目の系統と進化
アナバスのグループは、何と6000万年の歴史があります。グラミーはベタに近い仲間です。ベタの仲間とは4300万年ほど前に別れて進化、キノボリウオの仲間は、ベタとグラミーと5000万年ほど前に別れています。さらに、これらと5600万年ほど前に別れた魚が、スネークヘッド、雷魚として知られる魚です。さらにはナンダスやバジス、ダリオもアナバス目に属します。
アナバス目は200種ほどがいて、代表となるタイプ種は、キノボリウオAnabas testudineus (Bloch, 1792)。ドイツの研究者ブロッホBloch,によって、1792年に新種記載されました。基本的に、アナバスのグループは、酸欠になりやすい環境を生き抜く進化をした魚です。
キノボリウオたちを見て6000万年の歴史を感じてください。