ヨーロッパ原産、外来生物ブラウントラウト!秋田県横手市

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秋田市の横手の川に、巨大な魚が出現!
全長80cmを超えるその魚の正体は、ヨーロッパ原産の外来生物ブラウントラウト。サケに似た姿をした巨大なマスの仲間です。

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ブラウントラウトSalmo trutta Linnaeus, 1758(横手川支流)
日没後に活発に動き、休んでいる魚を襲う

特徴: 黄色い地色に黒い斑紋、泳ぎを制御する脂鰭は赤色。
若い個体は、体側に暗色のパーマークが10箇所前後あり、赤い斑点が散らばる。
平均サイズは全長70cmほどですが、沿岸部に暮らす個体は大型になり、原産地のヨーロッパでは140pを超えることも!
※河川残留個体は40pほど。

秋田県横手市横手川.ブラウントラウト生息地.jpg
ブラウントラウトは水温20℃以下の環境を好み、川の水温がぐっと下がる積雪前、降雨による増水が刺激となって遡上を開始します。横手川を遡上し、川幅3mの細い沢をぐいぐい遡る姿は圧巻です。

ブラウントラウト.胃内容物.生態系影響.jpg
とても魅力的な魚ですが強力な捕食者で、体の3分の1ほどもある獲物を丸飲みします。魚を好み、イワナやヤマメ、ウグイなどを爆食!在来生物に与える影響は大きく、横手市の周辺の川から徐々に生き物たちの姿が消えています。
ブラウントラウトは淡水魚ですが、海に入ると豊富な餌を食べて巨大化します。厄介なのは、サケのように産まれた川に戻るとは限らないこと。沿岸域を移動し、様々な河川に侵入して分布を拡大します。秋田県だけの問題ではないため、広い視野で対策を講じる必要があります。

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卵の大きさは直径5mmほど。体重1sの小柄なメスの体内に560個の卵を確認しました。

遡上したメスは、適度な砂礫が存在する場所を見つけると、尾鰭で川底を掘って産卵します。産卵後はオスと共に産卵床の近くに数日間留まりますが、水位の低下に伴いその場を去ります。卵は5℃以下の水温で孵化までに約100日かかり、仔魚は卵黄を吸収して成長するまで砂礫下から動かず、孵化後20日ほどで全長25mmを超える頃に浮上。主に水生昆虫を餌とし、成長に伴い魚類を中心とした食性になります。メスは生後3年で全長30cm前後に成長すると産卵します。

※ブラウントラウトは産卵時期が遅く、イワナやヤマメなどが産卵した後に同じ場所で産卵します。そのため、掘り起こされた卵が流れたり食べられたりして、在来生物の繁殖に影響が出ます。

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大きなブラウントラウトを捕獲!横手市横手川支流、武道川

※10月以降は禁漁期です。ルールとマナーを守り、魚たちと適切に関わりましょう。

Yotube 生物ハンター加藤英明【公式】かとチャン
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ブラウントラウトを追う
絶賛編集中!


〈秋田県ブラウントラウトの侵入〉
大松川ダム
秋田県横手市に定着したブラウントラウトは、今から80年以上前に持ち込まれたと言われています。大松川ダムが形成される前に存在した集落で、養殖が試みられていたようです。飼育場所はダム湖の西側に位置する大倉沢川支流の上流。しかし、逃げ出したものが野外で繁殖し、今に至ります。
大松川ダムが完成したのは、平成11年3月のこと(1999年)。建設後、村はダムの底に沈みましたが、ダム上の沢に逃げ込んで生き延びたブラウントラウトは、ダム湖で暮らし始めました。そして、今では繁殖期になるとダム湖に流入する川を遡り、産卵しています。ダム上の沢は水温が低いため、産卵は横手川よりも2週間ほど遅れて始まります。孵化個体はある程度成長するとダム湖で暮らし、性成熟に達すると産卵のため遡上して命を繋げます。

様々な環境に適応するブラウントラウトの力強さに驚きますが。。
人為的な移入と拡散・増殖に脅威を感じます。

今後はブラウントラウトの適切な管理が求められます。


ブラウントラウト
・世界の侵略的外来種ワースト100(IUCN)
・日本の侵略的外来種ワースト100(日本生態学会)
・生態系被害防止外来種(環境省)「産業管理外来種(適切な管理が必要な産業上重要な外来種)」ブラウントラウト、ニジマス、レイクトラウトの3種
・移植禁止外来魚(北海道内水面漁業調整規則)
・指定外来種(ふるさと滋賀の野生動植物との共生に関する条例).放流禁止・飼養許可申請



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