受精後の卵は、発生が進むと約30日で卵殻が割れて、内卵膜に包まれた状態になります。薄くて透明な膜内に、海水が取り込まれた状態です。膜は丈夫で張りがあり、指でつまんでも簡単には破けません。
不思議なことに、カブトガには孵化前に卵膜の中で4回脱皮をします。きっと、力強く動くことができる体になるまで卵の中にいて、孵化後の世界を生き抜く確率を高める戦略なのでしょう。
卵殻から出てきた卵をよく見ると、胚の後方に薄い膜を確認できます。これは脱皮殻です(写真:第3回胚脱皮)。この頃から、卵の中で活発に回転運動を行うカブトガニの様子を観察することができます。そして第4回背脱皮を行うと、三葉虫によく似た1齢幼生の形態になり、その後、孵化して海水中に飛び出します。
静岡大学教育学部加藤研究室では、カブトガニ類を初め、絶滅が危惧される生物の保全に関する研究を行っています。繁殖や放流、生息環境の改善、教育活動を通し、身近な生物たちの保全を試みます。